100℃近くの化学物質と水蒸気を噴射して、敵を撃退する虫がいます。
その名は「ミイデラゴミムシ」です。
小さな爆発音と共にガスを噴射するので、「へこきむし」とも呼ばれます。
そんなへこきむしのガスですが、ヒトが触るのは大丈夫だという事だったので、実際にガスに触れてみました。
果たしてガスに触れた手はどうなったのでしょうか?
今回は、ミイデラゴミムシの生態をまとめていきます。
1. ミイデラゴミムシの外見
出展:http://column.odokon.org/2008/0409_092000.php
体長は11~18mm程度です。
足や触覚は黄褐色で、頭・胸は黄褐色に黒紋があります。
2. 分布・生息環境
日本では北海道~奄美大島まで生息しています。
湿潤な平地を好み、田んぼのあぜ道などでよく見られます。
3. 食性
ミイデラゴミムシの生体は、ミミズ、カタツムリ、蛾の幼虫などの小さな昆虫を食べる肉食性です。
死肉なども食べます。
幼体は半寄生的で、ミズスマシやケラの卵に寄生し、卵を食べます。
特異性の高い食性のため、アメリカではケラの駆除にミイデラゴミムシが用いられたことがあるそうです。
4. ガス生成の仕組み
ミイデラゴミムシは貯蔵のうという所に、ヒドロキノンと過酸化水素を蓄積しています。
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これが外部からの刺激により反応室へ送られます。
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この部屋の周辺から分泌される酵素によって、100℃近くのベンゾキノンと水分を生成します。
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小さな爆発音とともにそれを噴射します。
この高温の気体は、尻の向きを変えればどの方向にも噴射できる上、数発を連続して噴射することも可能です。
2つの化学物質に分けて保存しておいて、必要な分だけそれらを混ぜて使用するので効率的ですね。
5. ガスを使うのは防御のため
自身を食べようとしたクモやカエルに対して噴射することで、天敵を撃退します。
当たればカエルの皮膚などに火傷を負わせることが可能です。
また飲み込まれてしまった場合も、この毒ガスを使って吐き出させることができます。
ミイデラゴミムシは他の昆虫に比べて消化液の影響を受けにくく、2時間近くもカエルの腹の中で生き続けられることが分かったそうです。
おなかの中でこんな虫が暴れていたら、カエルもさすがに吐き出したくなりますね。
6. 実際に触ってみた
図鑑によると…
分泌物を直接手に受けると、熱くて痛く、皮膚は褐色に染まるとのことでした。
実際に触ってみた所…
こうなりました。
確かにガスが当たったと思われる部分が赤く変色しています。
感覚は、ガスが当たった時に少し熱痛かったですが一瞬でした。
その後はただ色が変わっているだけで、痛くもなんともありません。
7. ミイデラゴミムシまとめ
100℃のガスを噴射する虫ですが、人に対して害は無いので、特に気にする必要はありません。
むしろ農業的には害虫を捕食してくれる益虫といえます。
そんなミイデラゴミムシですが、幼虫の餌のケラが近年減少している事から、数を減らしていると考えられます。
ケラが減少している理由は田畑の減少や、圃場整備です。
他にケラに寄生する生物として、ケラトリバチ科の寄生バチが知られていていますが、その中のアカオビケラトリバチは複数県のレッドデータブックに記載されています。
ミイデラゴミムシもレアな虫にならなければ良いですね。