ヘビといえば、マムシやアオダイショウが有名ですが…
実は日本には現在の所、42種類のヘビが記載されています(種レベル)。ウミヘビ類を除くと34種類です。
そのうち本州で見られるのは8種のみで、その他は南西諸島などの離島に生息しています。
では具体的にどんなヘビ達がいるのでしょうか?
今回はグループごとに簡単な生態の説明を加えながら、日本産ヘビ全種の名前をまとめてみました。
1. メクラヘビ科
外来種とされていますが、日本ではブラーミニメクラヘビの1種のみが見られます。
沖縄・本州の一部・小笠原諸島などに移入されました。
首が他のヘビ類のようにくびれておらず、目が非常に小さいという特徴を持ちます。一見するとミミズにそっくりです。
メクラヘビの仲間は、早い時期に他のヘビ類から分岐し、原始的な特徴を残しながら独自の進化を遂げてきたと考えられています。
2. セダカヘビ科
このグループも、日本ではイワサキセダカヘビ1種のみです。
ほとんどカタツムリのみを食べるという特殊な食性を持ちます。
石垣島と西表島のみに生息する固有種です。
3. タカチホヘビ科
・アマミタカチホヘビ
・タイワンタカチホヘビ(ヤエヤマタカチホヘビ)
・タカチホヘビ
基本的に地中で行動し、ミミズを餌としています。
普通のヘビは鱗が瓦状に重なっていて皮膚が隠されていますが、タカチホヘビの鱗はタイル状に並んでいるため皮膚が裸出しています。
そのため土中生活には適していますが、日光下は乾燥に弱いため苦手です。
4. ナミヘビ科
大きなグループなので属ごとに分けます。
アオヘビ属
・サキシマアオヘビ
・リュウキュウアオヘビ
サキシマアオヘビは八重山諸島、リュウキュウアオヘビは沖縄諸島・奄美群島・小宝島・宝島に生息する固有種です。
両種ともミミズを餌としていると考えられています。
オオカミヘビ属
宮古島・石垣島・西表島にサキシマバイカダが生息しています。
森林とその周辺に生息し、木によく登るのが特徴です。
トカゲ類を捕食します。
サワヘビ属
サワヘビ属のほとんどは渓流などの淡水に棲んでいます。
日本では久米島にキクザトサワヘビのみが見られ、山地の渓流に棲みながら、サワガニを食べることが分かっています。
生息数が極めて少なく、種の保存法により国内希少野生動植物種に指定されているレア種です。
ジムグリ属
北海道・本州・九州・四国などにジムグリが生息しています。
名前の通り地中の穴を好み、やや低温を好むヘビです。
ナメラ属
・シマヘビ
・スジオナメラ(サキシマスジオ、タイワンスジオ)
・シュウダ(シュウダ、ヨナグニシュウダ)
スジオナメラやシュウダは南西諸島の島々に生息しています。
ヒバカリ属
・ヒバカリ(ヒバカリ、ダンジョヒバカリ)
・ミヤコヒヴァ
・ヤエヤマヒヴァ
ヒバカリが本州・四国・九州などに、ガラスヒヴァ・ミヤコヒヴァ・ヤエヤマヒヴァはそれぞれ南西諸島の特定の島々に生息します。
ダンジョヒバカリは、長崎の男女群島のみに生息するヒバカリの一亜種です。
ヒバカリはミミズ・カエル・ドジョウなどの小型魚類などを餌としています。
そのため水中でも活動し、潜水して獲物を捕食します。
一方でミミズを餌とするため、陸上でもよく行動し、実はかなり活動領域の広いヘビです。
またヤエヤマヒヴァは、直接子供を産む、胎生のヘビとして知られています。
ヒメヘビ属
・ミヤコヒメヘビ
ミヤラヒメヘビが与那国島、ミヤコヒメヘビが宮古島・伊良部島に生息します。
ミヤコヒメヘビは林床の落ち葉や石の下に潜みながら、ミミズや昆虫を捕食します。
日本原産では最小のヘビです。
マダラヘビ属
・アカマダラ(アカマダラ、サキシママダラ)
・シロマダラ
シロマダラは本州・九州・四国などに、アカマダラは対馬・尖閣諸島に、アカマタは南西諸島に広く分布しています。
マダラヘビ類はいずれも夜行性で、胴体の背面にまだら模様を持っています。
食性は幅広いですが、爬虫類をよく食べるものが多いです。
ヤマカガシ属
本州・四国・九州などにヤマカガシが棲息しています。
餌のほとんどをカエルが占めているため、近年のカエル類の個体数の減少とともに数は減少傾向です。
奥歯に毒牙をもつ毒蛇でもあります。
コブラ科
・ワモンベニヘビ(イワサキモンベニヘビ)
ヒャンは奄美群島に、イワサキモンベニヘビは石垣島と西表島に棲息します。
いずれも模様の美しいヘビであり、小型の爬虫類を食べていると考えられています
ヒャンやハイはやや強い毒をもちますが、噛みつかれたとしてもわずかしか毒は入らず、頭部も小さいため、ヒトに対しては危険なヘビではありません。
クサリヘビ科
ハブ属
・タイワンハブ
・トカラハブ
・ハブ
タイワンハブは外来種ですが、いずれも南西諸島に棲息する毒蛇です。
ハブの毒は特別に強いわけではないですが、頭が大きいため毒量が多い事や、体が長く攻撃範囲が広いことから危険なヘビとなっています。
一方、サキシマハブやトカラハブの毒性はハブに比べて弱いです。
ヤマハブ属
奄美諸島・沖縄諸島の特定の島々に、ヒメハブが棲息しています。
山地森林の湿った所を好み、カエルを中心としたさまざまな無脊椎動物を食べます。
また本種は卵生ではありますが、孵化期間が1~2日と非常に短く、卵の殻もきわめて薄いことなど、かなり胎生に近い繁殖様式を持っています。
マムシ属
・二ホンマムシ
北海道~九州などにニホンマムシ、対馬のみにツシママムシが棲息しています。
二ホンマムシは毒蛇として一般的に知られていますが、性格自体はおとなしいヘビです。
一方のツシママムシは、より神経質で攻撃的と言われています。
また何気に卵を産まない胎生です。7月~8月には妊娠している雌が、胎児の発育を促進するために日光浴に出てくることが多くなり、咬まれる事故が増えます。
日本産蛇の種類と名前まとめ
色々と書いたことが多くなったので一覧表を載せておきます。
科 | 属 | 種 |
メクラヘビ | メクラヘビ | プラーミニメクラヘビ |
セダカヘビ | セダカヘビ | イワサキセダカヘビ |
タカチホヘビ | タカチホヘビ | アマミタカチホヘビ |
タイワンタカチホヘビ(ヤエヤマタカチホヘビ) | ||
タカチホヘビ | ||
ナミヘビ | アオヘビ | サキシマアオヘビ |
リュウキュウアオヘビ | ||
オオカミヘビ | サキシマバイカダ | |
サワヘビ | キクザトサワヘビ | |
ジムグリ | ジムグリ | |
ナメラ | アオダイショウ | |
シマヘビ | ||
スジオナメラ(サキシマスジオ・タイワンスジオ) | ||
シュウダ | シュウダ | |
ヨナグニシュウダ | ||
ヒバカリ | ガラスヒヴァ | |
ヒバカリ(ダンジョヒバカリ・ヒバカリ) | ||
ミヤコヒヴァ | ||
ヤエヤマヒヴァ | ||
ヒメヘビ | ナガメヒメヘビ(ミヤラヒメヘビ) | |
ミヤコヒメヘビ | ||
マダラヘビ | アカマタ | |
アカマダラ(アカマダラ・サキシママダラ) | ||
シロマダラ | ||
ヤマカガシ | ヤマカガシ | |
コブラ | ワモンベニヘビ | ヒャン(ヒャン・ハイ・クメジマハイ) |
ワモンベニヘビ(イワサキワモンベニヘビ) | ||
クサリヘビ | ハブ | サキシマハブ |
タイワンハブ | ||
トカラハブ | ||
ハブ | ||
ヤマハブ | ヒメハブ | |
マムシ | ツシママムシ | |
ニホンマムシ |
以上のように大半の種は、沖縄をはじめとする南西諸島に棲息していることが分かります。
沖縄の島々は、島がつながったり離れたり、沈んだり隆起したりと複雑な歴史のもと形成されてきました。
そのため島ごとに多くの生物が種分化しています。
また大陸とも近いため、大陸との共通種が多いことも特徴です。
今回ヘビをまとめてみて、南西諸島の種の多様性がいかに高いかが分かりました。
沖縄では原生林の減少や、マングースをはじめとする外来種により数を減らしている種も多いですが、このような多様性が維持されることを願いたいですね。
以上、日本に棲息する全ヘビ類まとめでした。