生物・野食

【ナマズの味・生態】 ナマズは地震を予知できるか?

ある日、家の前の水路に仕掛けた籠にナマズが入っていました。

滋賀に来るまでナマズなんてその辺に居ないだろうと思っていたので、驚いた記憶があります。

その後は、水路脇を散歩している時にたまに見かけるようになり、この辺では身近な生物なんだと気づきました。

最近では57年ぶりに新種のナマズが記載されたとかで話題ですね。

今回はそんなナマズを食べてみた感想とナマズの生態をまとめてみました。

 

1. ナマズの種類

 

ナマズは現在のところ、日本で4種類が確認されています。
琵琶湖とその支流に生息するビワコオオナマズとイワトコナマス、最近見つかったタニガワナマズ、そしてナマズ(マナマズ)です。

今回はもっとも身近なナマズ(マナマズ)について書いていきます。

 

2. ナマズの外見的特徴

 

全長30~60㎝。

模様や色は個体差が激しく、色は周りの明るさによって変えています。写真のように黄色っぽいもの~黒いものまで様々です。

他の魚に比べて肛門が前の方についていて、肛門から尾びれまでが長いのも特徴です。

これは産卵時に、オスがメスに巻きつくための形態だと考えられています。

またおろし金状の歯を持つため、素手で口を持つと指が血だらけになります。
ただおろし金状の歯では、餌を噛み砕くことはできません。ナマズは水ごと吸い込んで獲物を捕食するため、その歯は獲物を逃さないための役割を持っています。

 

2. ナマズの分布

 

ナマズは現在、沖縄などの島を除く全国に生息しています。

しかし元々は西日本にしか生息していなかったようで、関東や東北には移植されて入ったと言われています。

 

3. ナマズの感覚器官

 

ナマズの特徴として、立派なヒゲを持っていることが言えます。

このヒゲには、水の振動を察知する触覚器官や、獲物が発する味を感知する味蕾という器官が集中しています。
ナマズは体表にも、この味蕾を多く持っていて、体全体が舌の役割を果たしています。

ナマズの味蕾の数は魚の中でダントツに多いそうです。

 

またナマズの表皮には、小孔器という器官が全身に分布しています。

この小孔器は、湖に投げ込まれた電池一個から流れる電流を、数キロ先でも感知できる能力があるそうです。

ではこの小孔器が何に役立つのでしょうか?

実はどんな生きものでも、生命活動の中でごく微弱な電流を流しています。
ナマズは小魚やエビの発する微弱な電流を感知して、これらの餌を捕っていると言われています。

 

4. ナマズは地震を予知できるのか?

 

ナマズが地震の前に暴れるという話は、日本で古くから伝えられています。
現在でもしばしば、地震の前にナマズが活発になるという事が確認されているようです(東京水産試験場 藤縄 高橋 1994)。

地震の前には地電流と呼ばれる微弱な電流が発生します。
ナマズは前述のように微弱な電流を感覚知できるため、この地電流を感知することで行動が活発になるのでは無いかと言われています。

まだハッキリと立証されているわけではありませんが、ナマズ自身が地震を予知できる可能性はあるかもしれません。

 

5. ナマズの生活環

ナマズの産卵時期は、田んぼに水が入り、田植えが行われる5月はじめから6月頃です。

ナマズは雨が降った日の夕方~夜間に、水路を遡ってきます。
雨が降った後には田んぼから水が流れ出しますが。その温かくにごった水をたどって、田んぼを目指しているようです。

田んぼの排水口をジャンプして遡上したナマズは、田んぼの中でオスとメスのペアになります。
そしてオスがメスに巻き付くことで産卵を促し、卵を受精させます。

産卵が終わると水路を通って、湖沼に帰っていきます。

夏から秋には活発にえさを食べます。夜に行動し、主なエサは小魚・エビ・水生昆虫などです。
完全な肉食魚類で、日本の淡水生態系の頂点に位置しているといえます。。

秋に栄養を蓄えて冬になると、岩の間や水底の泥の中で冬眠します。
このようなサイクルで生きているナマズですが、自然個体の寿命は約10年と言われています。

 

6. なぜ田んぼで産卵するのか?

 

田んぼは絶えず干上がる可能性のある危険な場所です。たどり着くまでにもわざわざ湖沼や川から水路を辿って来る必要があります。

ではなぜナマズは田んぼを目指すのでしょうか?

その主な理由は3つあります。

1.外敵が住み着いていない

田んぼは秋から冬にかけては水がなくなるため、卵を食べる小魚やエビなどが住み着いていません。
外敵が少ないと、親が稚魚や卵を守る必要が無くなります。

2.暖かい

田んぼは水深が浅いため水が温まりやすいです。水が温かいと卵のふ化や稚魚の成長が早くなります。

3.えさが豊富

田んぼの土には多くの栄養が含まれています。そのため水が入ると植物プランクトンが急激に増え、それをえさにする動物プランクトンが増えます。
また田んぼでは、ユスリカやそのほかの水生昆虫類も多く繁殖します。
これらの生物がナマズの稚魚のえさになっているわけです。

以上の理由より、田んぼはナマズの稚魚にとって最適な生育環境となっているわけですね。

 

7. ナマズの味

 

一般的にナマズは淡水魚でありながら、生臭さも少ない白身で小骨も少なく美味しいとされています。

筆者は数日間泥抜きしたナマズを、かば焼きにして食べてみました。

確かに骨は少なく白身の美味な魚でした。
薬品のようなケミカルな香りはしましたが、熱湯をかけてぬめりを完全に取るとかなり臭みは消えますよ。

卵も煮付けにして食べてみましたが、味の薄いタラコのような味でした。
美味しく無かったです(笑)

ちなみにナマズのおいしい旬は、油が乗る晩秋から冬だそうです。

今回は近場で採れた3匹を食べてみましたが、いずれもケミカルな香りがしたので、生息環境には留意しましょう。

 

8. ナマズまとめ

以上がナマズの生態や味についてでした。

かつては全国各地の水路で普通に見られたナマズですが、現在では減少傾向にあります。

その理由は…
1.川や水路のコンクリート護岸による隠れ家の減少
2.えさの小魚やエビ類の減少
3.水路の堰による遡上阻害
などが考えられています。

ナマズのように田んぼを産卵場所に使用して、水路や湖沼をすみかとする生物はフナ、ドジョウ、メダカなどが存在します。
中にはすでに絶滅危惧種となったものも多く、ナマズもそうならないことを願いたいものですね。