『 鳰の海や月の光のうつろへば浪の花にも秋は見えけり 』
意味: 鳰の海よ。秋の色に変わった月の光が映るので、季節が感じられない波の花にも秋が来ている事が分かるよ。
これは新古今和歌集に登場する句です。
【鳰の海(におのうみ)】という言葉は、実は琵琶湖の別名。
そしてこの鳰というのは鳥の名前で、 カイツブリという鳥です。
このカイツブリは滋賀の県鳥になっていて、県内ではキャラクターやお菓子のモチーフに使われるなど愛されています。
今回はそんな琵琶湖の象徴とも言える鳥、カイツブリの魅力をまとめてみました。
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カイツブリとは?
カイツブリの外見・鳴き声
出典:photozou.jp/photo/show/3181271/237523371
全長は約26cmでハトよりも小さな鳥です。
写真上は夏の羽の様子で、上面が黒く、首や頬はきれいな赤色ですね。
これが冬になると全体的に褐色の地味な色になります。
地味ですがこれはこれでかわいいです。
黄色の中に小さくぽつんと黒点のある目も特徴的ですね。
出典:http://photozou.jp/photo/show/2995347/215311464
またキリキリキリキリ!とよく鳴きます。
よく通る声なので鳴き声で存在に気づくことも多いです。
カイツブリの分布・生息地
ほぼ全国で繁殖する留鳥*ですが、北海道や九州北部のものは、冬に暖地へ移動します。
(留鳥*…一年中同じところに留まって、渡りをしない鳥の事)
主に湖沼や河川に1年中生息し、生活のほとんどを水上生活で過ごします。
公園の池や、町中のちょっとした小川にもいたりしますよ。
カイツブリの食性
主にフナやタナゴなどの魚類を食べていて、水生昆虫などの動物やヒシの実などの植物も食べます。
30秒近くも潜水することが可能で、水中を巧みに泳いで獲物を捕食します。
ちなみにカイツブリの語源は、「掻きつ潜りつ」や、潜水する際の水音「ッブリ」が転じた物と考えられているそうです。個人的には後半の説はカイツブリのカイの部分が説明できていないような気がするので、前者推しです。
カイツブリの一生
水辺の植物や杭などに作られた巣で、卵から孵化します
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生まれてすぐにヒナは泳ぐことが可能で、孵化後約1週間で巣から出るようになります。
小さいうちは親鳥が背中にひな達を乗せて、保温したり、外敵から守ったりします。
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ヒナは自分で採食できるまで親鳥から採食の仕方を教わり、60~70日で巣立ちます。
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生後約一年で生殖機能が成熟した後、繁殖期になると縄張りを形成します。
(繁殖期は主に4月から12月と長く、2月頃に幼鳥が見られることもあります)
この時期のカイツブリは縄張り意識が強く、ピッという短い鳴き声で威嚇してきます。
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そして水草の葉や茎を組み合わせた浮き巣を作り、4~6個の卵を産みます。
卵は雌雄交代で温められ、20~25日後にヒナが誕生します。
カイツブリは、一生のほとんどを淡水の水中で過ごすという点で特徴的です。
多くの鳥は近寄ったら飛んで逃げますがこいつらは潜って姿を消します(笑)。やはり泳ぎに特化した鳥ですね。
知ったかぶりカイツブリとは?
知ったかぶりカイツブリとは、びわ湖放送で放送されているアニメ歌番組です。
この番組では滋賀県のあるあるネタをアニメ歌として発表しています。
例として、「告白の歌1 ”告白編”」 という歌の歌詞の一部を見てみましょう。
・帰りの電車で山科過ぎたら途中でそれて、湖西線と知りました→途中で京都線と湖側に行く線に分かれます
・近江大橋、びわ湖大橋ときどき「どっちやったっけ?」→琵琶湖にあるたった二つの橋ですが、たまに位置関係が曖昧になります
・世界のニュースのBBCもびわ湖放送とおもってた→琵琶湖放送も英語でBBC
など滋賀県民にしか分かりにくいネタが詰まった歌詞となっています。
話がそれましたが、カイツブリが関係あるのは番組のキャラクターです。
出典:Amazon
あにツブリ、恋ツブリ、野洲のおっさんカイツブリなど複数のキャラクターが存在するそうで、滋賀県内を中心にヒットしています。
背面が黒くて、頬が茶色め、くちばしの端が白いなどカイツブリの特徴をとらえていますね。
今後は県内だけでなく、全国に滋賀の魅力を知ってもらう役割が期待されています。
確実にカイツブリを見るには?
確実にカイツブリを見たいという方は、滋賀県立琵琶湖博物館に行きましょう。
給餌タイムのイベントでは、カイツブリがいきいきと水中を潜る様子を見ることができます。
カイツブリの個体数は減少傾向…
都会でも普通に見られることも多いカイツブリですが、全体的な個体数は減少しています。
琵琶湖では1980年代に2000羽以上がいたとされていますが、近年では500羽前後に減っているとされ、県のレッドデータブックでは希少種に指定されています。
減少の原因は…
①河川や水路の改修によるヨシ原や水生植物の減少
②バス釣りなどのプレジャーボートの侵入による繁殖妨害
③外来魚の増加による小魚などの水生動物の減少
が考えられています。
対策としては、ヨシ原や抽水植物帯の保全と、繁殖期の抽水植物群落への立ち入り規制、タナゴやモロコなどの魚類の保全が必要です。
カイツブリまとめ
以上がカイツブリの生態などでした。
実は筆者の家の前の水路にも、カイツブリが生息しています。
毎年そこで繁殖するのですが、卵を残したまま巣を放棄してしまったり、カラスに襲撃されたりで、一度も卵が孵ったことはありません(突撃したカラスですがそのまま溺れて天国へ。誰も幸せになってないやん…)
今年こそは親の背中に乗るヒナの姿を見てみたいものですね。
カイツブリ自体は街中の公園などでも見られることも多い鳥なので、池に行った際にはぜひ探してみてはいかがでしょう?