ヒルと言えば、近年なにかと話題のヤマビルの印象が強いと思います。
私も一年前までは、ヤマビルと田んぼにいるらしいチスイビルくらいしか知りませんでした。
しかしある日のこと、家の近くの水路で生物獲りをしていて、ある生き物に出会いました。
大きな黒いヒルです。大きさにも驚きましたが、最もびっくりしたのがこいつの動き。
ヒルは貝みたいにゆーっくり移動して知らぬ間にくっ付くような物だと思っていたのですが、こいつはアクティブに泳ぎ回ります。
それからヒルに興味を持って水路をガサガサしていると…
なんか色々なタイプがいることに気づきます。
その後もヒルを探し続けた結果、数種類のヒルを見つけることができました。
そこで今回は、意外と身近にも生息している水生ヒルの生態を、実際に捕獲したヒルの画像とともに紹介します。
※ヒルの同定は新日本動物図鑑復刻版(北隆館)を用いて行いましたが、筆者のヒル同定知識は確実なものではないため参考程度におねがいします。
Contents
1. そもそもヒルとは?
ざっくり言うとヒルとは体の前後端に吸盤を持っていて、他の生物や物体にくっ付きながら生きている生き物です。
ヤマビルの印象が強いため陸にいるという印象があるかもしれませんが、その大部分は水生です。
淡水、汽水、海水のいずれにも生息し、世界中の湖沼、池、水路などにみられます。
今の所、日本では60種類以上のヒルが確認されています。
2. ヒルの食性
主に3つのタイプに分けられます。
①哺乳動物の血を吸うヒル(ヒルド科の一部、ヤマビル科)
チスイビル、ヤマビルなどが該当します。
日本に人の血を吸うヒルは3種のみです。意外に少ないですね。
血を吸う際には、前吸盤にある細かい歯で吸血する動物の皮膚を切り裂きます。その際にはヒルジンという物質を分泌しますが、これが血液の凝固を妨げるため、ヒルに血を吸われると血が固まりにくくなります。
今回はチスイビルを2匹捕獲できました。
②外部寄生したり、体液を吸うヒル(グロシフォニ科、ウオビル科)
両生類・爬虫類や水鳥に外部寄生したり、貝類・小昆虫などの体液を吸うものがいます。
今回グロシフォニ科のヒルは、4種類以上見つけました。
ハバビロビル?かと思われるヒル。ネットの画像を見ているとヒラタビルというのもよく似ていました。
触ると丸くなって、けっこう固いです。石や貝殻の裏にくっ付いていました。
今回は約350匹のヒルを捕獲したのですが、202匹という断トツの多さでした(多分ハバビロとヒラタを混同している)。
このヒルはヤマビルやチスイビルのように、皮膚を切り裂いて血を吸うのではなく、鋭い吻(口が飛び出た物)を突き刺して吸血します。
アタマビル。魚類や両生類、亀などに付くことがあるそうです。2匹だけとれました。
貝に寄生するヒルがいるとの事だったので、イシガイの仲間を開いてみたところ見つけました。
カイビルです。名前の通り二枚貝に寄生することが知られていて、多くはカラスガイに寄生するそうです。
こちらはスッポンを触っている時にみつけたものです。大きさ的にグロシフォニ科だと思うのですが、種名までは分かりませんでした。
その他にも、それぞれ異なった見た目のものが複数いましたが分からずじまいです。
図鑑やネット上に情報が少ないと難しいですね。
③ミミズや小昆虫を捕食するものヒル(イシビル科の多く、ヒルド科の一部)
ミミズや昆虫の幼虫などを直接飲み込むものがいます。比較的アクティブに動く印象です。
血や体液を吸うのではなくて肉食のグループですね。
そのためこのタイプのヒルは小動物にとって強力な捕食者であるとも言われています(リバーフロント整備センター,1996)
こちらは、水道の溝で発見したウマビルです。チスイビルと迷いましたが、背面がオリーブ色であることと、ネット上の写真をもとにウマビルとしました。主に貝類を捕食するようです。
私に衝撃をあたえたこいつは、恐らくシマイシビルです。
今回は86匹とれて、ハバビロビル?に続いて数が多かったですが、こいつを越える大物は出ませんでした。
伸縮性が高いようで、とどまっている時は横に広く小さくなるのですが、泳ぎだすとスマートになって細長くなります。
3. 水生ヒルまとめ
ヒルは血を吸うだけじゃなくて、直接えものを捕食する肉食の物もいるんですね。
グロシフォニ科のヒルについても人の血は吸わないので、触っても害はありません。
ヤマビルのイメージが浸透していますが、ヒル=害虫みたいなものではないということです。
ヒル自体は、主にチスイビルがその吸血性から医療に用いられてきました。
しかしそのチスイビルも数が減少して、京都のレッドデータブックで準絶滅危惧種となっています。
水田耕作に家畜を利用しなくなったことや農薬等の使用により、餌環境や生息環境が劣化している。
最近は府内のみならず全国的にも記録が途絶えつつあるため絶滅が危惧される段階になったと判断された。(京都府レッドデータブック2015)
今回、水路でヒルを探してみて、少なくとも7種類の水生ヒルが家の回りに生息していることが分かりました。
身近に知らない生き物がまだまだいることを改めて実感しましたが、気づかないうちに姿を消している生き物も多いのかもしれませんね。
以上、身近に見られるヒルの生態まとめでした。